インフォメーション 〜time now〜


新年のご挨拶

 皆さま、新年あけましておめでとうございます。

 昨年8月から諏訪の杜病院に勤務しております医師の小司久志と申します。僭越ながら新年最初のtime nowを担当させて頂きます。
 私は2003年3月に川崎医科大学を卒業後、主に呼吸器・感染症疾患を専門的に学び、2015年からスペインのバルセロナで研究職、ケニアとボリビアでは大使館の医務官として研鑽を積んで参りました。8年にわたる海外生活において失ったものもありますが、それ以上に多くのことを学ぶことができました。今回はその体験について少しお話しさせて頂きます。

 一つ目は「常識」について。常識とは「社会的に当たり前と思われる行為や物事のこと」という意味ですが、日本での常識は世界では非常識となります。時間は守らない、夜に出歩くと狩られる、歩行者がクルマを避けなければいけない等々、挙げればキリがありません。終いには病院で注射薬を塗布されても驚かなくなるほど精神力が鍛えられました。

 二つ目は「リテラシー」について。リテラシーとは元々「読み書きの能力」を意味する言葉でしたが、現在では「ある分野に関する十分な知識や情報を収集し、活用できる能力」という意味で使われています。昨今のコロナ禍でリテラシーに乏しい人々が目立つようになりました。私が赴任した国ではCOVID-19は漂白剤を薄めて飲むと効く、ワクチンを打つと死ぬとかスマホが腕にくっつく等の情報が出回りました。呪術系医療が横行する途上国で「日本大使館の医務官として何ができるか?」を考えた際に私の出した答えは「一人でも多くのヒトにワクチンを打たせる」ことでした。そのために任地での「ワクチンの効果」を証明し、国民へ周知するよう保健省へ提言できたことは自分にとって良い経験となりました。

 8年ぶりに日本へ帰国して高齢者をターゲットにした「テレビショッピング」を良く見かけますが、「振り込め詐欺」と何ら違いがないように思ってしまいます。様々な情報が溢れかえっているこの現代で、人伝の情報、テレビや雑誌の情報、インターネットの情報等々において、その意味や妥当性、情報源の信頼性、バイアスの有無を自分で咀嚼し理解する能力は極めて重要であると感じます。これからも皆さんと一緒に様々なことを学んでいけたらと考えております。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。



令和6年1月タイムナウ 医師 小司久志