インフォメーション 〜time now〜


 今回、time nowを担当します、医事課の田村岳志です。
 毎日、暑い日が続いていますがみなさんは体調いかがでしょうか。ここ数年、日本の夏は災害級の暑さとなり、仕事や遊びに関わらず日中の屋外活動は危険な状態となっています。お盆を過ぎたとは言え、まだまだ暑い日が続きますので十分注意をしてください。

 ところで、みなさんは『腎臓リハビリテーション(以下、腎臓リハ)』をご存じですか?腎臓リハとは、『腎疾患や透析医療に基づく身体的・精神的影響を軽減させ、症状を調整し、生命予後を改善し、心理社会的ならびに職業的な状況を改善することを目的として、運動療法、食事療法と水分管理、薬物療法、教育、精神・心理的サポートを行う長期にわたる包括的なプログラムである』と定義されています。

 当院は2000年の開院時より、慢性腎不全の各ステージから透析療法を受けている患者まで積極的なリハを提供してきました。当時はまだ「腎臓リハ」といった言葉はなく、一般的には腎不全患者の運動は腎機能を更に悪化させるとされていて、リハに対して消極的な考えが主流となっていました。このため腎不全患者や透析患者へのリハの実施などもってのほかで、透析施設とリハ施設を併設した医療機関はほとんどありませんでした。内部障害のリハでは心臓リハと呼吸リハが疾患別リハ料として診療報酬の中でも点数を認められていますが、腎機能障害のリハについては、診療報酬上でも個別の点数は認められておらず、また当時は回復期リハ病棟での透析医療も包括されていたため、脳卒中や大腿骨頚部骨折をはじめとしたリハが必要な透析患者は、急性期病院での治療後、リハの機会をほとんどもてずに自宅退院や透析施設へ転院する状況にありました。

 このような中、2011年1月8日に東北大学医学部の艮陵会館で上月正博先生を理事長に一般社団法人日本腎臓リハ学会の設立及び第1回日本腎臓リハビリテーション学会学術集会が開催されました。第1回学術集会の参加者は80名程度でしたが、第2回から一般演題による発表も少しでしたが行われ、慢性腎不全患者への運動療法の考え方が大きく変わり「腎臓リハ」という新しい分野が広がっていきました。2012年の診療報酬改定では回復期リハ病棟入院料の包括範囲から人工腎臓が除外され、回復期リハ病棟でも透析患者のリハが可能となりました。腎臓リハの有用性が徐々に広がることで診療報酬として、2016年に糖尿病性腎症の患者が重症化し透析導入となることを防ぐために「腎不全期患者指導加算(月1回100点)」が設定されました。2018年には「高度腎機能障害患者指導加算」として推定糸球体濾過量(eGFR)45mL/min/1.73㎡未満まで対象が拡大されました。その後も日本腎臓リハ学会で客観的データの収集・分析し結果を提示した結果、2022年の診療報酬改定では「透析時運動指導加算」が認められました。これは透析患者の運動指導に係る研修を受講した医師、理学療法士、作業療法士又は医師の指示を受けた(研修を受講した)看護師が、1回の透析中に連続して20分以上、患者の病状及び療養環境等を踏まえ療養上必要な指導を実施した場合に算定できるもので、透析患者のリハとして初めて診療報酬として認められたものでした。これによって運動療法を実施する透析施設が増えることで、腎臓リハの普及を更に加速させることとなりました。また日本腎臓リハ学会では、腎臓リハの普及および質の向上と担保を目的に2017年に「腎臓リハビリテーションガイドライン」を発刊し翌年、腎臓リハビリテーション指導士制度を導入。2019年3月に第1回目の指導士試験が実施され365名の腎臓リハ指導士が誕生しました。昨年の9月17日に第3回目の認定試験が実施され、現在までに590名の腎臓リハ指導士が誕生しています。勿論、この中には当院のスタッフたちも含まれています。興味のある方は日本腎臓リハ学会のHPを確認してみてください。一般社団法人 日本腎臓リハビリテーション学会 (atlas.jp)

 2011年に日本腎臓リハ学会が設立されてから10年で腎不全および透析患者への運動療法やリハの考え方は大きな変革を遂げました。当院でも透析中の運動療法や回復期リハ病棟での効果など学会等で発表を行ってきました。今後も大分県内で回復期リハ病棟と血液透析を併設している病院として当院が担う役割は大きいと感じています。その点を当院スタッフ一人一人が自覚し、自信を持って透析患者のリハや支援に取り組んで欲しいと思います。私自身、医事課に異動したことで直接患者さんに触れリハを行うことはなくなりましたが、今後も理学療法士として腎臓リハ指導士として腎臓リハの普及・発展に寄与できればと思います。

 今年度は令和6年3月16日~17日に新潟県の朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンターで第14回日本腎臓リハビリテーション学会学術が開催予定となっていますので、興味のある方は学会HPと合わせて確認してみてください。



令和5年8月 タイムナウ 諏訪の杜病院 医事課 田村岳志