インフォメーション 〜time now〜


 今回、time nowを担当させていただきます、褥瘡対策委員会の稲場です。よろしくお願いいたします。

 皆さま、「褥瘡(じょくそう)」って言葉を聞いたことがありますか?いわゆる「床ずれ」という傷のことです。寝たきりなどによって、体重で圧迫されている部分の血流が悪くなり滞る事で、皮膚の一部が赤黒く変色したり、ただれたり、傷ができた状態を「床ずれ=褥瘡」といいます。
 ただ寝ているだけで傷ができるの?と不思議に思うかもしれません。でも、できます。たった数時間でもできるのです。また、年齢にも関係なくできます。

 過去には、全国で「褥瘡」に関する訴訟があり、原告勝訴率は75%でした。医療側が褥瘡予防に必要な対策を怠ったという判決が大多数に下されたのです。従来、褥瘡は「看護の恥」とされ、褥瘡予防や治療は看護師のケアや経験、勘に委ねられるところが大きかったのですが、時に誤った知識で処置がなされるともありました。褥瘡発生後のケアや処置によって、重症化や入院の長期化に繋がるので、日本褥瘡学会などの関連団体を中心に調査や研究がすすめられ、「科学的根拠に基づく褥瘡局所治療ガイドライン」(2005年)、「褥瘡予防・管理ガイドライン」(2009年)が示され、褥瘡予防措置が科学的根拠に基づいて行われるようになりました。

 私たち褥瘡対策委員会も、患者の安全、安楽を第一に考え、このガイドラインに基づき活動しています。安楽=“身体的、精神的に苦痛がなく、不安が軽減される状態”と言われています。褥瘡がなぜいけないのか?それは、単純に「痛い」からです。痛みは苦痛と直結します。病気やケガ(骨折など)の治療で入院しているのに、褥瘡が発生してしまうと、新たな苦痛を、患者さんに与えてしまうことになります。そして、誇大な表現ではなく、本当に命に係わるからです。健康な方であれば、ちょっとした切り傷や擦り傷はすぐに治癒するでしょう。しかし、免疫力が低下していたり糖尿病で、感染しやすい状態であったりすると、傷口から菌が入り、その菌が全身に回り敗血症という状態に陥る事もあります。

 褥瘡予防対策は、医療者の義務です。私たち褥瘡対策委員会では、患者が、安全・安楽に入院生活が継続できるよう、いろいろと工夫を凝らして活動をしています。褥瘡の予防には、2時間ごとの体位変換、適切なクッションなどを用いた除圧、栄養状態を良好に保つことなどがあります。退院後の生活も見据えて、在宅生活でも継続して予防ができるよう、専門的な知識や、高額な介護用品を使わずに、身近なもので予防ができるような方法の紹介も行っています。興味がある方はいつでもお問い合わせください。




令和5年6月 タイムナウ 諏訪の杜病院 褥瘡対策委員会委員長 稲場留美