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 先月は、書くことが多くて伝えたいことをお伝えできずにいました。それは、2月21日に国連本部でのケニア共和国キマニ国連大使のロシアのウクライナ侵攻を受けてのスピーチです。アフリカの歴史と重なる大使のこのスピーチが話題になりました。長文になりますが、考えさせられる内容ですのでお読みください。

 「この状況は、私たちの歴史と重なります。私たちの国境は私達自身で引いたものではありません。ロンドン、パリ、リスボンといった遠い植民地の本国で引かれたものです。いにしえの国々の事など何も考慮せず、彼らは引き裂いたのです。現在、アフリカの全ての国をまたいで、歴史的・文化的・言語的に深い絆を共有する同胞たちがいます。独立する際に、もし私たちが民族、人種、宗教の同質性に基づいて建国することを選択していたのであれば、この先何十年も血生臭い戦争を繰り広げていたことでしょう。しかし、私たちはその道を選びませんでした。私たちは既に受け継いでしまった国境を受け入れたのです。それでもなおアフリカ大陸での政治的、経済的、法的な統合を目指す事にしたのです。危険なノスタルジアで歴史に囚われてしまったような国をつくるのではなく、未だ多くの国家や民族、誰もが知らないより偉大な未来に期待することにしたのです。私たちは、アフリカ統一機構と 国連憲章のルールに従うことにしました。それは、国境に満足しているからではなく、平和のうちに築かれる偉大な何かを求めたからです。帝国崩壊あるいは撤退してきた国家には、隣国との統合を望む多くの人がいることを知っています。それは、普通の事で理解できます。かつての兄弟たちと一緒になり、彼らと共有の目的を持ちたいと思わない人などいるものでしょうか。しかし、ケニアはそうした憧れを力で追及する事を拒否します。私たちは、新たな支配や抑圧に再び陥らない方法で滅びた帝国の残り火から、自分たちの国を甦らせないといけないのです。 私たちは、人種・民族・宗教・文化などいかなる理由であれ、民族統一主義や拡張主義を拒むのです。我々は、今日再びそれを拒否したいと思います。ケニアは、ドネツクとルガンスクの独立国家としての承認に重大な懸念と反対を表明します。更に我々は、この 安保理のメンバーを含む強大な国家が、国際法を無視するここ数十年の傾向を強く非難します。多国間主義は今夜死の淵にあります。過去に他の強国から受けたのと同様に今日も襲われているのです。多国間主義を守る規範のもとに、再び結集させるよう求めるにあたり、私たちは全ての加盟国が事務総長の後ろ盾となるべきです。また、関係当事者が平和的手段で問題解決に取り組むように求めるべきです。最後になりますが、ウクライナの国際的に認められた国境と領土的体制が尊重されることを求めます。」と述べられました。

 このスピーチに、アフリカの現状を見て、「スピーチの中だけの理想論だ」「実際のアフリカは違うじゃないか」と非難や批評をする人たちがいます。大国(先進国)から彼らが辿らされた理不尽で悲惨な歴史の数々…植民地…奴隷貿易とその悪影響…アパルトヘイトなどを想い、その困難で屈辱的な状況を受け入れ、脱却して建国をしたという自負心が強く伝わってきませんか?正当なことを歴史(経験)から伝えているのです。彼らは、どの部分を取って、どこだけを見て言っているのでしょう。どこの国だって、誰だって理想に近づけてはいても完璧ではないでしょう?最低なのは、相手の立場や思いを理解しようともせず、今日に至るまでの努力や苦難、背景を知ろうともせず、共感もできずに批判や否定だけして見下す輩です。相手の真意も汲めない心貧しい人。本当に悲しく心が痛みますが、どこにもいるんですよね…そんな人たちは、誰か(他人)のために犠牲を払い重責を担って、何かを成し遂げたことがないのです。一度でもその経験があるのなら、そんなことはできないものです。確かに、アフリカの国々は、様々な分野で理想からはほど遠い状態にあります。でも、このスピーチから学ぶ事は必ずある筈です。私は素晴らしいスピーチだと、ケニアに携わる一人の人間としてとても誇らしかったです。だから、皆さんにも大使のスピーチ内容を、是非知っていただきたかったです。どうでしたでしょうか?

 先月タイムナウで、IOCやオリンピックの在り方を考えなければならないとお伝えしましたが、国際組織の在り方も考えなければならないと、ロシアへの対応や議会の様子を見ていて思いました。暴力を暴力以外の方法で止める最善策とは?この暴力を、世界はどう止めるのか?今も、ウクライナ国民は暴力と恐怖に晒されています。






4月タイムナウ 岩根