インフォメーション 〜time now〜

 今回、time nowを担当させて頂きますリハビリテーション部、理学療法士の梅田義之です。病院内外の視察団総勢17名の一員として、イタリアでの海外研修に参加致しましたので、その報告をさせて頂きます。長文となりましたが気楽に読んでくださいね。

 現在、イタリアは日本に次いで世界第2位の長寿国で、医療費は国家予算の7%とヨーロッパでは少ない方です。日本と同様に生活習慣病が多く肥満が年々増加し、ガンの発生率も上昇しているとのことでした。今回、視察に行ったリハ病院はローマにある国立病院で、病床数534床、医師455名、看護師928名、コメディカル159名、医療事務155名と職員数も多く、非常に大きな病院でした。イタリアの医療も国民皆保険制度で、リハは日本と同様に疾患別に算定期間が設けてあり、基本的には一つの病院でリハを完結する仕組みとなっています。回復期リハ制度は無く算定期限になれば退院し、リハ継続を希望する場合は自由診療となります。経済的に余裕がない方は、十分な医療が受けにくいのが現状でした。訓練時間は1日3時間と日本と同様でしたが、臥位での東洋医学を応用した治療的アプローチが中心で、歩行などの動作訓練をしている場面はほとんど見られませんでした。私は、脳血管疾患では装具等のデバイスを運動療法のツールとして使用することで、効率的な動作が獲得できるようにアプローチすることが多いと思います。生活場面でも装具を利用することで運動学習を促し、効率的な動作を可及的早期に獲得することを目的としているため、治療的アプローチが中心のリハに新鮮さを覚えました。

病院視察

 環境面はイタリアの町並みは非常にきれいで、道路には昔の石畳が残っていました。道路の幅は日本に比べて狭いのですが横断歩道がない所も多く、交通状況を確認しながら道路を横断することが頻回にありました。街を車椅子で移動している方もいましたが、健常者でも石畳での移動は疲れやすく障害者にとっては活動するのが大変な環境と感じました。また、セラピストの考え方の違いなのか使用者の嗜好かは分かりませんが、杖をついている人のほとんどがロフストランドクラッチを使用していました。

 今回、イタリアの医療に触れ、日本との違いを肌で感じることができました。この研修で学んだことを今後のリハに活かし、多くの患者さんがより良い生活を送れるように支援していきたいと思います。

 世界遺産の観光や食文化にも触れてきましたので、その様子をどうぞご覧ください。

 やっぱりイタリアといえば、ピザマルゲリータ&パスタ(地中海のシーフード)

おっさん会inヴェネツィア     ピサの斜塔に行けば、やっぱりやっちゃいますよね

ラベッロの日の出は絶景!(アマルフィの近くの村)   サン・ピエトロ大聖堂

コロッセオ     地中海を背景に

 また、今回はプライベートの時間を利用して、小学校2年生から続けている剣道をイタリアの剣士と行ってきました。訪問したのは、ACCADEMIA ROMANA KENDO(ローマ剣道研修会:以下ARK)という道場です。決して道場破り(!?)ではありません(剣道を通しての国際交流ですので誤解しないでくださいね…笑)。

 私は4年前に錬士六段となり、来年には七段受審資格が得られ受審予定です。剣道の昇段審査は非常に厳しく、私が合格した六段審査は合格率11.5%(受審者976名、合格者112名)、七段は8%前後、最高位の八段は約1%と日本の全ての試験の中で最も難しい試験と言われています。私も指導者の立場になりましたが、今後の稽古や剣道指導に活かす意味でも海外の剣道のレベルを知り、剣道をどのように理解し稽古に取り組んでいるのか、本家日本の剣士として直接学びたかったこと、また剣道を学んでいる海外の剣士方々の何かお役に立てることがあれば…と思ったことが訪問の動機です。

 剣道は日本発祥の武道であり文化です。オリンピックの種目にはありませんが、3年に1回世界大会が行われ約50カ国が参加しています。恐らく皆さんが想像する以上に国際的に普及しているのではないでしょうか。私は海外での剣道は初めての経験であり、言葉の壁もありましたのでどのような雲行きになるのかとても不安でした。しかし、その不安はすぐに解消されました。TAXIを下りるとすぐにARKのメンバーの方に出迎えて頂き、日本語、イタリア語、英語をうまく使い分けて、コミュニケーションもスムースで自然と笑顔もこぼれ、緊張感もすぐに吹き飛んでしまいました(同行の野村OTが英語で通訳してくれました)。しかも、ARKのメンバーの中に以前、大分市にある明野という病院のすぐ近くに住んでいた方がいて世間は狭いなぁと、妙に親近感を感じてしまいました(この方も通訳をしてくれました)。

 ローマには14の道場があり、ARKには約50名在籍しています。館長のバルダッサーリ先生は四段、コーチのリッチ先生は四段の腕前です。2年前の第15回世界大会がイタリアで行われたこともあり、ARKのメンバーも見学に行き世界の剣道に触れたことで剣道熱も上昇している様子でした。稽古は週3回(月・水・金)、午後8時30分~10時30分の2時間行っており、訪問日の6/27は金曜日でイタリアはバカンスの真最中でしたが、30名程稽古に参加していました。職種は弁護士、警察官、ヴァチカン市国の職員、アメリカ大使館職員等、多岐にわたり経済的にも余裕のある方が多い印象を受けました。剣道を始めたきっかけは、日本の漫画(六三四の剣、バガボンド)や三島由紀夫の影響、宮本武蔵の五輪書を読んだこと、純粋に剣道や日本が好きでその文化を学びたい等でした。剣道は礼節や所作も重んじているため、海外の剣士がその意味を理解して日本の剣士と同じようにできるのかなぁと疑問を持っていましたが、日本の剣士と同様に真摯に実践していました。イタリア人は一般的に陽気で明るく、個性が強いイメージがありますが、寡黙で誠実な人柄な方が多く、好印象を持ちました。稽古はできるだけ一緒に剣を交えたかったのですが、技術指導を依頼され基本打ちの指導を1時間、その後、面をつけて地稽古(試合形式の練習)を1時間行い共に汗を流しました。最後は、記念品兼お土産を交換(私は竹刀とあられを渡し、ARKのユニフォームとワインを頂きました!)、記念撮影を行い、再会を誓って道場を後にしました。

 ARKのバルダッサーリ館長、リッチ先生(けがのため稽古はできず)

基本打ちの指導場面    地稽古の場面

 私の熊本時代の恩師である湯浅範士に、剣道の良さは「お互いに与え合うことに喜びを感じられること」と、教えて頂きました。今回、海外の剣士が剣道に取り組む姿勢やその真摯な態度を通して多くのことを学び、普段日本にいると気づきにくい日本の文化や剣道の良さを再認識することができました。海外の剣士にとって本家日本の剣士は特別な存在であり、リスペクトされていることを肌で感じました。今後も日本や剣道の良さを世界の人々にも伝えていけるように、自己研鑚を積んでいきたいと思います。ARKの皆さん、グラツィエ!!!

 最後に、このような貴重な機会を与えて頂いた武居院長、岩根副院長にこの場を借りて感謝の言葉を申し上げます。

 ARKと諏訪の杜病院スタッフの国際交流場面

平成26年7月 リハビリテーション部 理学療法士 梅田義之