インフォメーション 〜time now〜


 今回、time nowを担当する医事課の田村岳志です。宜しくお願い致します。

 年度末を迎え、皆さん忙しくお過ごしのことと思います。また、4月から新しく入社する職員を迎えるための準備など、この時期は色々と慌ただしい日々が続きます。しかし、少し目を屋外に向けると気温も上がり桜の花の開花も近く気持ちの良い季節となりました。

さて私は現在、医事課に在籍しています。今年は医療での診療報酬の大きな改定はありませんが、病院をはじめとする医療機関では診療報酬の改定で大きく方向性が左右されることがあります。今回は少し診療報酬についてお話をしてみたいと思います。

 日本では全国民に加入が義務付けられている公的医療保険制度があります。これにより日本国民は病気や怪我などの際、保険証を提示することで誰でも何処でも必要な医療行為を受けることができます。また比較的少ない費用(負担)で世界でもトップレベルの医療行為を受けることができ、これは日本が世界に誇るべき制度であると言えます。

 医療行為を行った保険医療機関に、その対価として支払われる費用を「診療報酬」といい厚生労働大臣が医療行為1つひとつに点数を定めています。医療行為に対する対価は医療行為ごとに決められた点数を基に「1点=10円」として計算されます。これは全国一律で何処でも同じ医療行為に対する点数に変わりはありません。例えば初診料は288点ですので2880円となります。これに必要な医療行為の点数を1つひとつ足し合わせて計算した金額がその医療行為の対価となり保険医療機関に支払われます。そのうちの自己負担分(原則3割、但し年齢や所得に応じてことなる)は、患者さんが病院の窓口で支払い、残りが加入している医療保険者から保険医療機関に支払われます。

 診療報酬の点数は医療の進歩や日本の経済状況などを踏まえて通常2年に一度見直しが行われ、これを「診療報酬改定」といいます。まず、政府が国の予算編成を行う際に診療報酬全体の改定率を決定し、それを基に厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(以下、中医協)に意見を求めます。中医協は公益委員(学者など有識者)、診療側委員(医師の代表など)、支払側委員(健康保険組合の代表など)の三者構成となっており、ここで議論を行います。中医協では前回改定の影響の検証など議論を重ね、その上で厚生労働大臣からの諮問に対して、厚生労働省の社会保障審議会医療保険部ならびに医療部会で決められた改定方針に従って、個々の医療行為に対する点数の見直しを行っています。このように診療報酬は医療行為ごとに法定価格(点数)が決められており、その医療行為に対する施設基準などを満たしている保険医療機関に支払われます。

 保険医療機関の経営は主に診療報酬によって賄われます。医師や看護師をはじめとした医療従事者や事務職員などスタッフの人件費の他、医薬品や医療材料の購入費、医療機器・機材に係る費用、施設維持・管理費用などに使われます。しかし昨今、保険医療機関は新型コロナウイルス感染症や物価高騰に伴う医薬品や医療材料の値上げ、人材不足など厳しい状況が続いています。今後も皆さんが安心して安全な医療を受けることができるよう、この世界に誇れる制度を維持していくことは重要です。高齢化や人口減少により財源の確保が難しい状況の中、無駄を省く必要はありますが、必要な医療費まで削減し過ぎることは医療全体の安全性や質の担保が困難となり、その国の医療制度の崩壊に繋がりかねません。そのためには安定した病院経営ができるよう診療報酬の適正化が必要です。まずは、これを機に自身の診療明細表や中医協のサイトをご覧になってみてください。




令和5年3月 タイムナウ 医事課 田村 岳志