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 諏訪の杜病院医師 鈴木馨です。2019年12月11日に新型コロナ患者が初めて発生してから3年が経ちました。以前この紙面で「まさか疫病のパンデミックを見ることになるとは」と書きましたが、今年はその上に戦争が加わりました。激動の時代を生きているなと実感いたします。SARS-cov-2ワクチンに2価ワクチンが誕生しましたが、ウイルスも変異を来しており人類の対応の早さにもウイルスの免疫回避の速度にも舌を巻くばかりです。

 厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの報告結果(第108回、令和4年11月30日)より、日本人の4人に1人はすでに新型コロナウイルスに感染していることがわかりました。全国平均の抗体陽性率は26.5%(95%CI:25.6-27.5%)、我々が住んでいる大分県の抗体陽性率は24.9%(95%CI:18.8-31.7%)ですので、全国平均とほぼ同値です。なおこの抗体はワクチンでは上昇せず感染で上昇する抗体を調べています。ただしこれは献血者を対象にしており、16歳から69歳の結果であることは注意が必要です。今年の医学的なニュースでいえば、アルツハイマー型認知症の治療薬レカネマブ®が大規模臨床第Ⅲ相試験において、統計学的に有意な臨床症状の悪化抑制を示した(レカネマブ®投与群がプラセボ投与群と比較して27%の悪化抑制)、と発表されました。おそらくは日本でも販売されるようになると思われます。ただし投与群の17%に画像評価で脳出血が、12.6%に脳浮腫が認められており、副作用をどう評価していくのかが今後の課題となりそうです(Lecanemab in Early Alzheimer’s Disease:The new england journal of medicine, November 29, 2022:DOI: 10.1056/NEJMoa2212948)。新型コロナウイルスの国産経口治療薬ゾコーバ®は緊急承認され、内服できるようになりました。ただし現在は鼻水、のどの痛み、せき、発熱、倦怠感をプラセボで8日持続したところを、ゾコーバ®で7日間程度に短縮する効果しか確認できておらず、重症化予防効果の根拠はまだありません。

 医学の世界ではこの「ただし」の部分が非常に重要となりますが、メディアなどで皆様に伝わる際には見出し部分のみが強調される印象があります。現在内服している薬剤や疾患における心配事など、気になることはいつでも質問していただけると幸いです。内容が医療に限らず社会福祉や介護にわたることもありますが、喜んでお答えいたします。時には患者さんからお勧めの本を紹介されることもあり、私の密かな楽しみでもあります。最後になりますが、皆様のご健康とご多幸をお祈りいたします。


令和4年12月 諏訪の杜病院 リハビリテーション医 鈴木馨