インフォメーション 〜time now〜


 こんにちは。今回time nowを担当させていただきます どんぐりの杜クリニック 言語聴覚士の中村です。よろしくお願い致します。

 私が医療法人光心会に入職し、早くも10年が過ぎました。入職当初は、諏訪の杜病院で、成人を対象にリハビリテーション(以下リハ)をしていました。その後、通所リハなどの様々な部署で経験を積み、現在はどんぐりの杜クリニックで小児の療育を行っています。これらの経験を通して感じたことは、コミュニケーションの難しさです。患者さんや利用者さんとのコミュニケーションを円滑にするには、高次脳機能障害や発達障害などの特性に限らず、年齢や性別、性格など様々な因子も加味して、コミュニケーション方法を検討する必要があります。また、必要なコミュニケーション能力やソーシャルスキルも違うため、リハや療育のために通われている方だけでなく、ご家族や生活している環境、さらには、どのようなコミュニティに属しているのかなど、地域での生活にも目を向け、総合的に考えていく必要があると思います。

 突然ですが、ここでコミュニケーションについての“ある実験”を紹介したいと思います。それは、第2次世界大戦後のスイスで心理学者のルネ・スピッツが行った実験です。戦争で孤児となった乳児55人を最高設備の施設に入れ、生きる上で必要な食事や衛生管理などの世話は行う代わり、皮膚接触などの人間的スキンシップの一切を与えず、人間はどのように育つのかを観察する実験を行いました。結果は、27人が2年以内に死亡、2年を過ぎた子どもたちも17人が成人前に亡くなり、残りの11人の多くに知的障害や情緒障害の症状がみられました。非人道的で考えただけで恐ろしい実験ですが、この結果からも、人が生きていく上で他者とのスキンシップやコミュニケーションがいかに必要なのかが分かりました。

 私は言語聴覚士という職業に就いていますが、コミュニケーションがあまり得意な方ではなく、交友関係も広くはありません。これからも様々な経験を通して、自分を活かせるコミュニケーション能力を会得し、関わる方々にもその大切さを伝えられるセラピストになりたいと思います。

 最後になりますが、私の趣味についてお話したいと思います。私は、釣りやキャンプなどアウトドアが好きで、よく仲の良い友達と海や山などに出掛けます。その中でも、一番思い出に残っているのが、無人島に食料などを持ち込まずに、約1日サバイバル生活をしたことです。きっと1人では、食材が獲れないことにイライラしたり、夜は不安になることもあったと思います。でも、友人とコミュニケーションを取り、乗り越えることで有意義な時間を過ごすことができ、ここでもコミュニケーションの大切さを実感しました。コロナ禍で、なかなか人とのコミュニケーションがとりにくいご時世ですが、皆さんも家族や友人と、どんなことでもよいので一緒に活動をしてみてはいかがでしょうか?しっかりと、感染対策を講じて、安全を確保した状態で…。


令和3年10月 どんぐりの杜クリニック 中村憲太