インフォメーション 〜time now〜



 心地良い秋風が吹き抜ける秋天の頃、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

 私の所属しております、どんぐりの杜クリニックでは、発達障害をもつお子さんを対象に療育を行っております。新型コロナウイルス感染拡大により2020年2月27日に休校要請が発表されて以来、子どもたちは学校に登校できず、そのまま卒園、卒業、進級を迎えることになりました。また、部活の公式戦や修学旅行など一生に一度しかない大切な行事も変更や中止となり、やりきれない気持ちや悲しみ、喪失感など精神的ストレスを負った子どもさんたちも大勢いると思います。どんぐりの杜クリニックに通院されているお子さんの中にも、普段より落ち着きがなくなり、発散できない苛立ちで癇癪が増えたお子さんがたくさんいます。変化していく世の中に大人でも不安や戸惑いが隠せない中、小さな子どもさんたちの精神ケアは必至だと思われます。

 エリクソンが提唱する発達段階の中に、遊戯期や学童期に獲得しておかなければならないと言われている積極性や勤勉性は、学生時代に経験するテストや部活動、文化祭や運動会などの学校行事が大きな要になると思います。その大切な行事が中止となることで、何かを成し遂げる体験や、誰かと何かに協力し合うことで学ぶべき人との関わりの大切さなどを、十分に経験、獲得できないまま、結果的にアイデンティティの形成に繋がらない大人が増えていくのではないでしょうか。

 感染予防の観点から安全を考えると仕方のない状況ではありますが、何もかも中止にすることだけが正解ではなく、どのように工夫をして経験させてあげられるのかを私たち大人が考えていくことも大切だと思います。最近では、近隣の小中学校から運動会の応援歌や太鼓の音が聞こえてきます。今年は、時間短縮で開催される運動会について、療育の中でも活き活きとした子どもさんたちの表情に救われています。私も作業療法士として、一人の大人として新しいスタートラインに立ち、今私ができることを考えて日々取り組み、子どもさんたちの未来に繋がる社会を作っていきたいと思います。



10月タイムナウ どんぐりの杜クリニック リハビリテーション部 作業療法士 河野礼華